―もとサン教室―

  翌日、馬宮のボケはすでにクラス中もとい学校中に広まっていた。
  噂好きはどこにでもいるもんである。

 「判りきっていたがお前バカ」
 「君やっぱりアホ」

  教室に入った早々に森崎と宇宙の2人から遠慮ないコメントが飛んできた。

 「まぁ〜何て言うか、時差ぼけってやつだ」

  政治家の言い訳並に苦しい言い訳だ。
  小学生でももっとマシな言い訳ができる。

 「単に人の話を聞いてないだけだ」
 「下手な漫才はどうでも良い……ところで土産はなんだ?」

  何時の間にか馬宮達の周りには土産目当てのクラスメートが群がっていた。

 「ワインか?ワインだな?何年ものだ?」

  ※ 注 未成年の飲酒は禁止されています。

 「チョコか?チョコだな?」

  ここら辺が妥当ですが夏場は嫌がらせに等しい土産だ。

 「土産話とか言ったら笑顔で殴るぞ」

  お約束ですがやると反感を買います。

 『土産!土産!土産!』

  馬宮達の周りで土産コールが起こる。
  かなり嫌な光景が繰り広げられている。
  小さなお子さんが見たら軽くトラウマになりそうだ。

 「……ね」
 「……ん」
 「……ぬ」
 馬宮達は顔を見合わせた。

 「おいおい無いとか言うなよ」

 『早く出せ!すぐに出せ! 早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!! 早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!!!』

  クラスメートのボルテージが上がっていく。
  土産一つで一触即発状態――高校生にもなって大人気ない連中である。

 「1ヶ月も留学(あそび)に行ってて土産1つ無いのか!!」

  実際に留学に行って真面目に勉強する者はごく少数である。
  大半の生徒は期間中“文化交流”という名目で遊び歩いているのだ。
  因みに、馬宮達はと言うと、宇宙はそれなりに学び、森崎は妖しげな資料を集め、
  馬宮は真面目にずっと遊んでいたのだ(爆)。

 「いや……買ったには買ったんだが……」
 「もったいぶらずに早く出せ」
 「実は……」

  森崎と宇宙は馬宮の顔を見て話し始めた。

 「どっかのアホがな無修正なアレを買ってな」

  森崎はアホの部分を強調して馬宮を見ながら言う。

 「それがね関税で引っかかってね」

  宇宙は馬宮を見ながら苦笑いで相槌を入れる。

 「捕まる前に逃げたから……無かったり」

  馬宮はハハハと笑って誤魔化した。
  そう、全ては馬宮が原因である。
  空港での一件のあと無事に日本に戻った馬宮達だったが、馬宮がドサクサに紛れにて
  買って来た“無修正”な本が、何故か関税で発見されたのだった。
  流石に制服のままだったのでヤバイと判断し土産を諦め逃げてきたのだった。

 「ふざけんなぁつ!!×10」

 「へぶしっ」

  笑ったくらいで誤魔化せる訳も無かった。
  クラスメート達の怒りの鉄拳を喰らい、馬宮は高く高く舞い上がった。
  10回ほど。

 「まぁまぁ、落ち着け。代わりはある。ほれ」

  そう言って森崎は鞄から包を取り出し、喚いている集団に放り投げた。

 「なんだ、あるじゃないか」

  落ち着きを取り戻したクラスメート達は、我先にと包に手をかけた。
  包装紙を破り捨て、出て来た中身を見て再び彼らは叫んだ。

 「イギリス土産が何故にひ〇こ」

 「そこの駅に売ってたから」

  森崎は淡々とそう言った。

 「ふざけんなぁつ!!×50」

 「へぶしっ」

  再び湧きあがった彼らの怒りは、やっぱり馬宮に向けられ、50回ほど教室を舞った。

 「……なんで……なんで……俺」

  理由は簡単だった。そういうキャラだから。

 「おー、授業始めるぞ。席につけ〜」

  担任である松坂先生の登場により、皆席に着く。

 「マツザカさん。それ土産っす」
 「なんでひ〇子なんだ?」
 「成り行きです」
 「まぁいい。とにかく授業始める。そこ!ひ〇子食うな」

  ズタボロになっている馬宮を無視して、今日も長い授業が始まった。

 「……なんで……なんで……」

  理由は簡単だった。そういうキャラだから。




死闘的学生食堂

#02 四面楚歌 〜一寸先には敵だらけ〜





 ―もとサン教室前―

  時間は12時をまわったころ。
  授業中だというのに2人の生徒が教室の前をうろついていた。
  2人ともシティー迷彩のジャケットを身にまとい、誰がどう見ても不審者だ。

 「部長〜。本当にこんな事していいんっすか?」

  男の1人が教室の前のドア付近で止ると、先行していた男に声をかけた。

 「作戦中は私語を慎みたまえ、長沢君」

  部長と呼ばれた男は振り返らずに応え、廊下に何かを仕掛けていた。

 「イエッサー」

  注意され長沢の方も、仕掛けをつくり始めた。

 「しっかし、簡単なトラップとはいえ、けがしますよ」

  彼らが仕掛けていたのはトラップであった。
  ベアトラップ等の罠もあり、結構本格的なモノであった。

 「この作戦が我が部隊の命運がかかっているのだ」
 「それはわかっていますがねー」

  彼らはミリタリー部に所属する生徒だった。

  ミリタリー部――ただのサバゲー部と思われがちだが、その正体は軍隊そのものである。
  戦争好きな偏った嗜好のゴッツイ方々が創設した部なのだ。
  彼らが卒業今も影響力は大きく、廃部になろうもんなら素晴らしい事になるだろう。
  そんな彼らが、この様な奇行の行った原因は今日開かれる部活会にあった。

  生徒会部活総会――通称、部活会。
  生徒会の主宰で、各部活の代表が集められ1学期に1回開かれる会議である。
  その議題は主に2つ。
  一つは部活動の承認。
  学校の方針として、生徒は自由に同好会を作ることができる。
  そのなかで規模の大きくなった同好会を部活動への昇進させるか、逆に活動規模の
  縮小した部活の同好会への降格、もしくは廃部にするかを決めるのだ。
  もう一つの議題が部費の配分である。
  現在S校で活動している部活は50あまり。
  それに対して部費は決して多くは無い。
  シーズン・オフの部活の部費削減など、対策をしているがどうしても足りない。
  その為、生徒会が活動の内容と規模に応じて振り分けるのだ。

  基本的に生徒会が決めるのだが、各代表は不服があれば意見する事ができる。
  この会議の出来しだいで今後は決まる、ゆえに各代表は皆必死になる。
  中にはその白熱する会議を面白がり、見物しに来る生徒もいる。

  彼らにとっても馴染みのある行事であったが、今回はいつもと違った。
  召集と一緒に一通の手紙が来たのだ。

  親愛なるミリタリー部様へ
  残念な事に今回の部活会で貴方の部は廃部になる事が決定しています。
  私達の部活も今期で廃部になるが決定してしまいました。
  反対意見を述べた所で覆す事は出来ないでしょう。
  そこで私達に妙案があります。
  馬宮が代表するラストバタリオンが活動を偽って報告しているとの情報を掴みました。
  活動は一切行われていないのに中規模クラスの部費を摂取しています。
  私達は彼を生徒会に訴えようと思います。
  ですが、今まで生徒会の目を欺いてきた彼のことです。
  また誤魔化されてしまう恐れがあります。
  貴方達に彼の部活会を欠席させるように仕向けてもらえないでしょうか。
  これが成功すれば、貴方の部も私達の部も生き残ることが出来ることでしょう。

  やたらと怪しい内容であったが、彼らはその話に乗る事にした。
  彼らはどうしても部を潰す訳にはいかなかった。
  「部を潰したら埋めるぞ」と卒業した先輩方に脅されていたからである。
  新人部員確保に失敗した時点で、ミリタリー部の廃部は濃厚だったからだ。
  ヤバイそうな話だが、それ以外に方法は無かった。

 「長沢君も先輩の恐ろしさは覚えているだろ」
 「ええそりゃ。地獄の様な人たちでしたから」

  長沢は昔のしごきを思い出したのかゲンナリした顔で応えた。

 「やるしか無い……てことですか」
 「そうだ……我々にはこれ以外に道は無いのだ」

  2人はトラップを仕掛け終わると定位置まで下がった。
  時計が12時50分を指し、昼休みを知らせるチャイムが鳴りだす。
  決戦が始まろうとしていた。
―― To be continued ――




 次回予告

 偏った思考のミリタリー部の仕掛けたトラップが
 馬宮に多分襲い掛かるはずです(ナゲヤリ)
 一方、あの人が生徒会の暴挙に怒り暴れ出す?!

 『借り物の力で調子に乗るな!』

 『あいつは……まさか!〇〇』(秘密)

 「これはポルターガイストです」

 餓えた野郎共と追い詰められた男達がぶつかり合う
 血肉吹き荒れるデンジャラスバトルの幕が上がる(嘘です)
 今回も著作権は大丈夫だろう(希望的観測)

 #03 竜頭蛇尾

 次回もサービス、サービス


企画/原案(主犯) バト  協力(共犯) 悪魔のパッソル
爆走書記はフィクションです。人物、組織、場所、事件等全て架空の存在です。

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